僕は君の名前を呼ぶ


「わたしが今笑えているのは、海斗くんのおかげだよ」


もう、何なんだ彩花ちゃんは。すぐ俺を泣かせにかかる。


「やべー。また泣きそう」


「もー」


あきれたようにそう言うと、手を伸ばし俺の涙をぬぐってくれた。


自分の笑顔があるのは俺のおかげだって言ってくれるし、こんなことしてくれるし、涙が止まらない理由がなかった。


「ね、彩花ちゃん」


「んー?」


柔らかな笑顔でこっちを見た。


「彩花ちゃんがここを経つ前に、一日俺にくれない?」


「え?一日だけじゃなくても何日でもあげるよ?」


「何日も欲しいところだけどさ、彩花ちゃんも準備とかで忙しいだろ?最後にふたりで思い出作ろうよ」


「うんっ!」


普通に“最後”と言えてしまうところにもう最後なんだと嫌でも感じさせられる。


できることなら、時間を止めてしまいたいと思った。


離れたくない。


─────
──


< 278 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop