僕は君の名前を呼ぶ
「わたしが今笑えているのは、海斗くんのおかげだよ」
もう、何なんだ彩花ちゃんは。すぐ俺を泣かせにかかる。
「やべー。また泣きそう」
「もー」
あきれたようにそう言うと、手を伸ばし俺の涙をぬぐってくれた。
自分の笑顔があるのは俺のおかげだって言ってくれるし、こんなことしてくれるし、涙が止まらない理由がなかった。
「ね、彩花ちゃん」
「んー?」
柔らかな笑顔でこっちを見た。
「彩花ちゃんがここを経つ前に、一日俺にくれない?」
「え?一日だけじゃなくても何日でもあげるよ?」
「何日も欲しいところだけどさ、彩花ちゃんも準備とかで忙しいだろ?最後にふたりで思い出作ろうよ」
「うんっ!」
普通に“最後”と言えてしまうところにもう最後なんだと嫌でも感じさせられる。
できることなら、時間を止めてしまいたいと思った。
離れたくない。
─────
──