僕は君の名前を呼ぶ
「しっかし『彩花不足』って。俺から彩花を奪っておいてなんだよ」
「はっ!? 俺は奪った記憶はない」
というか当時の俺はむしろ心をいためながら彩花と夏樹を応援してたぐらいなんですけど。
夏樹には『ライバルに助言してどうするんだ』ってなぜか怒られたし。
意味わかんねー…。
「ハハッ。やっと楽しそうな顔になったな」
「は?」
「せっかく俺が来てやったのにお前、今にも泣きそうな女子みたいな顔しやがって」
「あー、うん。…ごめん」
やっぱり、夏樹にはかなわない。
さりげない優しさでこうやって弱ってる俺を助けてくれる。
「夏樹。俺が女の子だったら夏樹に惚れてたよ」
「あいにく女の子にはもう惚れられてるんでね。間に合ってるんですわ」