僕は君の名前を呼ぶ


「彼女のこと、大好きなんで」


「あら、海斗くんがノロケるなんて珍しいわね」


白い肌に真っ赤な弧を描き彼女は妖艶に笑った。


他人に自分の恋人のことを話すのはなかなか恥ずかしいもの。


酒のせいか、今日はなぜか口が動いた。


「会えないストレスで痩せたんだっけ。ダメよ食べなきゃ。海斗くんはただでさえモヤシ君なんだから」


「なんすか、モヤシって」


自分で言うのはあれだけど、そこまで言うほど細くなくない? 俺って。


痩せたといっても急激に体重が落ちたわけでもない。


まあいっか、モヤシでも…。


「つらいわね、会えなくて」


「慣れましたけどね。もう、3年になるんで」


「うふ、慣れほど恐ろしいものはないわよ?」


「…?」


俺の頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。


< 335 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop