僕は君の名前を呼ぶ


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「行っちゃった…」


今さっき走り去ってしまった終電を見て、誰かがつぶやいた。


久しぶりの飲み会にテンションの上がったサークルのメンバーは、時間の存在を忘れて飲み続けた。


その結果がこれだ。


終電を逃すという最悪の事態に陥ってしまった。


「いやー、飲み過ぎたね。参った参った」


「何が『参った』よ! わたしは『電車なくなるから早く帰ろう』って何度も言ったのに『まだ飲むぅ~』とか言ってさっさと会計すませなかったのは、あんたでしょうが!」


先輩たちが言い争っている。


里香先輩はかなり飲んでいたのに、潰れることなく今こうしてはっきりとした口調で男の先輩を叱っている。


やっぱり、酒豪なんだなあ。


一大事なのに険悪なムードにならないのは、この光景は先輩たちが大学にいた頃によく見ていたものだったからだ。


俺たちは「またやってらー」とあきれている。


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