僕は君の名前を呼ぶ
──
─────
「ハァ…」
「失礼だな、そんな堂々ため息なんて。この件については謝ったじゃん」
「そうだけどさァ…」
俺のため息の原因。
事の発端は、数時間前──。
『海斗、これからお父さんに会いに行くから準備して』
『…は?』
朝、そんな彩花の声で目覚めると抱きしめていたはずの彼女が腕の中にいないことに気づいた。
目をあけると、すでに支度を済ませた彩花が。
“お父さん”って、実家のお義父さん? それとも、離れて暮らす実のお父さん?
覚醒しきらない頭でぼんやりと思考を巡らせると、いなくなった彩花のかわりに抱きしめていた布団を半ば無理矢理はがれてしまった。
裸だし、俺!
『ちょ、おい、待てって!』
『ほら、行くよ! 自由席だから急がなきゃ』
──…というわけで、俺たちは今新幹線に乗って関西方面に向かっている。
彼女の実の父親に会うために。
根っからのお父さんっ子な彩花。
明るい家庭にいた幼い頃の記憶を抱えて、必死に生きてきた彩花。
大好きなお父さんとの別れを経験した彩花。
義理とはいえ、“お父さん”に心身共に傷つけられた彩花。
彼女は、“ふたりの父親”に、ずっと前から縛られ続けている。
彼女が必死にもがいても、どうにもならない。
俺が助けようと手を伸ばしても、どうにもならない。
…どうか、どうにか。
この再会が俺たちにとって良い方に向かいますように。