僕は君の名前を呼ぶ
新幹線を降りてからしばらく電車に揺らると、目的地に着いた。
──そこは、彼女の父親が勤めているという天文台。
彩花によると、昨日から施設の一部を一般に開放していて、どうやらそれを狙ってここに来たかったらしい。
…彼女の計画は、昨日の俺の訪問で狂ってしまったのだけれども。
父親にアポはとっていないらしい。
もしかしたら、今日は出勤していないという可能性もある。
…もし会えたら、どうなるのだろうか。
義理の父親から離れるために遠くで進学できるような行動力がある彩花だ。
夢を捨てて、こっちを選ぶ…そんなこと、ないよな……?
休日ということもあってか、館内は多くの親子でにぎわっている。
こういうところに彩花と来るのが久しぶりで、何とも形容しがたい気持ちになった。
「ん?」
「何でもないよ」
彩花が隣にいる幸せを噛みしめると同時に、不安を払拭するように、彼女の手を強く握った。
「彩花。どこにも行かないよな?」
「どうしたの、海斗。わたしはどこにも行かないよ。ずっと、海斗の隣にいるから」
彩花はそう言って微笑んだ。
「…うん。そうだよな」
曖昧に答えた。
なんだか嫌な胸騒ぎがした。