僕は君の名前を呼ぶ
画面に表示された《橘 彩花》という文字。
メールも電話もまだしたことがないのに、彼女の名前を見ただけで嬉しくなれるなんて相当重症だな、俺。
まだ夢みたいだ。
彼女とここまで深く関われるだなんて。
電話帳に彼女の名前が登録されて、このことが少しだけ現実味を帯びてきた気がする。
俺はそんな小さな幸せを胸にしまって、彼女を家まで送ったのだった。
俺はいつもより少し遅めの夕食をとり、部屋でコンポで音楽を聞きながらゆっくりしていた。
もちろん、アナクロの曲だ。
今日の気分で、ラブソングを選んでみた。
しばらくすると、部屋に着信音が響いた。