[完]Dear…~愛のうた~
恐る恐る目線を上に上げると……

「……!!」

誰かの目線とバッチリ合った。

そしてそれと同時にこらえきれない涙が
とめどなく流れ落ちてくる。

そして私はそのまま彼の名前を心で呼ぶ。

“隆弘……”

いつしか私の手は自然とゆっくり
酸素マスクに動いていて、
私はそっと、酸素マスクを彼から外した。

すると、前にコンプレックスであり、
チャームポイントであると言っていた
整った厚い唇がプルンと輝く。

そしてそれがゆっくりと動き始める。

「実、彩……」

途切れ途切れだけど、ちゃんと伝わった
私の名前を呼ぶ綺麗な声に
私はそのまま隆弘に覆いかぶさって
ギュッと後ろに手を回す。

隆弘はそんな私を見て少しだけ笑っていた。

ナースコールを押すこともしっかり忘れていて……

______

「実彩!!」

あれからみんなに連絡すると
杏奈が一番最初にやってきた。

それと同時に私は部屋を後にする。

私がいないほうが話せることもあるかなと思って。

そしてそのままゆっくりとロビーへ進むと
眩しいオレンジ色の朝日が照りつけてくる。

あぁ、もう朝になってたのか……。

私なとんな呑気なことを考えながら
ロビーにある大きな椅子に座る。

座った瞬間、ドドッと
溜まっていた疲れが溢れ出てきた気がした。

そしてそのまま疲れと共に
ゆっくりと瞼が閉じていった。
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