[完]Dear…~愛のうた~
麗さんはゆっくり私の近くに寄ってきて

「ねぇ、私達二人だけにしてもらってもいい?」

杏奈を睨むように見下しながらそういった。

「でも……「心配しなくていいから。
MISAさんには何もしない」

何か言いたげな杏奈を遮って、
一度聞いたことのある低い声が私の耳に届く。

「……っ杏行こう」

何かを察したような光が杏奈を立たせる。

「でも「大丈夫だ、何かあっても
俺らで実彩を助けるから」

そう言って半分強引に
杏奈を部屋から引きずり出す。

それに続くように直人と真司くんもうすむきながら
ゆっくりと光の後を追う。

あぁ、みんないなくなっちゃう……

お願い、行かないで……!!

怖くて怖くて痙攣するように体が震える。

そんな時……

「タイムリミットは5分や。
それが過ぎたら俺らはここに入ってくる。
それ以内に、あんたはここから出てくるんやで」

開いたドアの目の前で真司くんが麗ちゃんに
睨みをきかせて低くトゲのある声で言い切る。

そして、真司くんとバッチリ目が合うと
さっきの険しかった表情が一変、
ふわっと優しく笑いかけてくれた。

その瞬間、私は真司くんの温かさを知った。

昨日、いや、もう一昨日かもしれない。

私は怒りの余り真司くんを責めたのに、
彼はこんな私に笑いかけかけたのだ。

私はそんな真司くんに“ありがとう”と
心の中で呟いた。

そしてドアがバタンと閉まった時

「何が、“俺らで守る”よ……バカみたい」

その低い声に体は再びビクッと反応する。

そして、鋭い目つきで私を捉える。

「私はあなたが嫌い。
世界で一番憎いかもしれない」

そんな言葉がナイフのように私の胸に突き刺さる。

「どうして、あなたがいるの?
あなたさえいなければ、
私は元に戻れたのに……!!」

段々近づいてくる麗さんに比例して
私も一歩一歩下がっていく。

しかし、私の後ろには大きなベッドがあって、
そのままそこで後ろに倒れ込んでしまう。

そしてそのまま私と麗さんの体温が触れる時
まだ彼の温もりがある暖かいベッドの布団を
目を閉じると同時にキュッと握りしめた。

「あんたのせいで、私は隆に振られた!!」

その壁が振動するような大きな声と
あまりの桁外れの言葉に私は思わず目を開けて
目の前にいる麗さんを見つめる。
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