starting over
そんな小さな甘い時間に浸る余裕もなく、職員室に入れば現実が待っている。国公立受験をしている3年生は、まだ結果が出ていないし、1、2年生の学年末試験もあるし、新しい1年生を迎える準備も山盛りだ。

そんな殺伐とした空気の中に、進路が決まった連絡が入ったり、仕事の山が少し低くなった3月半ば、卒業した生徒から相談したいという連絡が入った。

いつもなら、仕事から開放される高揚感でいっぱいの週末だが…

「え?月曜日、千葉くん来るんですか?」

普段なら癒されるほのの笑顔なのに、俺は少し気が重たく、力なくうなづいた。ほのの、少し嬉しそうな反応の真逆にいた。

「正樹さん、なんかとってもイヤそう…」
「あぁ…そうだな。」
「なにかあるんですか?」

千葉を見ていると、昔の自分と向き合うようで、言葉に詰まることが多々ある。あの時、ああしていれば、とか、あんな風に声をかけてれば、とか。

俺が出来なかったことを、同じ轍を踏まないようにアドバイスをしたりもした。それにも関わらず、そのまま千葉も出来ないことがしょっちゅうだった。
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