後悔なんて、ひと欠片もない


「いらないよ。そんなの。じゃあね」


「あああっ、待ってくださあい!」


彼は、同僚と飲みの帰りでここに寄ったのだ。


「ダメです!私、あなたがいなかったら、拉致されて、山の中でボロボロにされていました……

今、勤務中なので、すぐお礼できないんですけど…お願いですっ、行かないで下さいっ」


ゲームセンターのユニフォームのまま、外まで出てきた私に彼は目を丸くした。


「カズさん、相変わらずモテますね」


連れの男がからかうと、和史さんはふざけて、彼の頬にパンチする真似をする。

そんなポーズだけでもカタにハマっててカッコ良かった。


「あの…!このままでは私の気持ちが収まらないんで!
お菓子とかお酒とか差し上げたいな、と思うので、連絡先教えて頂けませんか?」


ーー何言ってんだろ、そこまですることないのに…


私は自分でもそう思うのに、なぜか口は止まらなかった。

なりふり構わなかった。




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