溺愛御曹司に囚われて

秋音さんに促され向き合って席につく。

彼女があまりにウキウキした様子で私をジッと見つめるので、私はなんだか恥ずかしくなってしまった。
こんな綺麗な人にこんなふうに見つめられたら、世の男性は大変だろうな……。


「小夜ちゃんって呼んでもいいかしら? すっごくかわいいわ。お人形さんみたい」


秋音さんは手際よくランチメニューのパスタをふたり分頼み、少女のように頬杖を付いて私を見る。


「ハルちゃんってば、なかなか彼女を紹介してくれないと思ったらこんなかわいい子を隠していたのね」

「は、ハルちゃん……?」


それってもしかして、高瀬のこと?
目をパチリと瞬く私に、彼女がいたずらっぽいウィンクをする。


「そうよ、深春の”はる”でハルちゃんなの。母も私もそう呼ぶわ。ハルちゃんはすごく嫌そうな顔をするけどね」


それから頬をプウッと膨らませると、拗ねたように言う。


「私、あなたのこと紹介して欲しくて昨日のリサイタルも二枚分チケットを渡したの。それなのにハルちゃんってば、結局ひとりで来ちゃうし。そうかと思えば、今朝突然電話をかけてきてね。姉貴のせいで彼女に誤解されたとか言って、すんごい怒ってるの」


そ、そうだったんだ。
なんだかお姉さんまで巻き込んじゃって申し訳ない。
ただの私の勘違いだったのに。

私はうんうんとうなずきながら彼女の話を聞く。


「それで、私も私で、すごく腹立っちゃってね。ハルちゃんは頑なに紹介しようとしないし、リサイタルの招待にも応じないし、そうかと思えば自分の男のお姉さんにそんな電話かけさせて……ハルちゃんてば、どれほどとんでもない女と同棲してるのかしらって!」

「えっ! あ、ご、ごめんなさい!」


どうしよう!
言われてみれば、私って相当酷い女だ。印象最悪すぎ!
これはお姉さんからお叱りを受けても仕方がない。
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