溺愛御曹司に囚われて
「もしも高瀬がもう一度私を選んでくれるなら、これからもずっと側にいさせてほしいの」
少しの間迷うように視線を彷徨わせた彼は、それから恐る恐る私の両肩に手を置く。
軽く引き寄せ、私が抵抗もせずに身体を預けているのを確認すると、もう一度私を抱き寄せた。
力いっぱい抱きしめ、一ミリの隙間もないほどに互いの身体を引き寄せ合う。
そうしてしばらくジッとお互いの存在を確かめ合いながら、木々のささやきと水の歌だけを聞いていた。
ようやく気持ちが落ち着いてきたのか、高瀬が少しだけ腕の力を緩め、私の顔を覗き込んだ。
片手で私を抱き寄せたまま、優しく頬に触れる。
「バカ、それはこっちの台詞だ。あんなに全力で逃げられて、目の前で一ノ瀬に連れ去られて、正直もうダメだと思った。結構ヘコんだぞ」
ムスッとして拗ねるように言う高瀬がなんだかかわいくて、ダメだと思いつつもつい笑ってしまった。
高瀬はますます唇を尖らせる。
私は背伸びをし、彼の頬に小さな音を立ててキスをした。
高瀬がキョトンして目を丸くする。
「先生とね、人魚の岬に行ってきたの。ちゃんとお別れをしてきた。高校生の頃、高瀬が先生になんて言って約束をしたのかも聞いた。今までずっと、私の側にいてくれてありがとう。これからは私も、好きって気持ちをたくさん伝えるから」
私はそう言いながら彼を見上げ、目を疑った。
高瀬の頬が、真っ赤になっている。
彼も自分でそれに気が付いたのか、ふいっと顔を背けて大きな手のひらで口元を覆い隠してしまった。
私はつい、率直な感想を声にする。
「高瀬、かわいい……」
「うるせえ」
完全に拗ねてしまった高瀬だけど、眉間にシワを寄せ、そっぽを向いたままチラリと横目で私を見る。
私は彼に、にっこりと微笑み返した。