【完】切ないよ、仇野君



「どうしたん?お腹痛かつや?」


この、どうにでもなれという気持ちの中で、突然、頭上から優しい声が降り注ぐ。


柔らかな、棘の無い甘い声に、思わず涙で汚くなった顔を上げてしまう。


「わっ……!どげんしたん?泣くほど体調悪かとね?」


そう言ってよしよし、と硬くて、頭を握り潰せるんじゃないかってくらい大きな掌が、私を優しく撫でる。


声だけじゃなく、その男子は全てから優しさを滲ませていた。


いかにもスポーツマンというようなベリーショートの黒髪と、少なめに生えた幅広の眉、水晶みたいに澄みきった瞳と、それを縁取る丸っこい垂れた目のライン。


太い筋が真っ直ぐに通った鼻と、薄く、横幅の長い唇は、男らしさを優しさにプラスさせていた。


好みは分かれそうだけど……結構なイケメン、だと思う。
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