【完】切ないよ、仇野君
その疑問に答えるように、数歩先を歩いていた泰ちゃんが振り返った。


その顔は、いつもの穏やかな笑顔とは少し違う、憂いを帯びた笑顔。


太陽が眩しいくらいに逆光しているせいで、そう見えるのかもしれないけど。


そんな顔で立ち止まった泰ちゃんは、私に甘めのその声で言葉を紡ぐ。


「歩、ちーんこつ気に入っとったもんな。カッコよかし、いい奴やし、バスケも上手かし、お似合いかんしれんね」



その紡がれた言葉達は、私の心臓にグサグサと鋭利に突き刺さり、多くの刺傷を残していくよう。


どうして好きな人にこんなこと言われなきゃいけないんだろう。


どうして言った泰ちゃんも、私と痛みを共有してるような顔をするのだろう。


……痛いよ。心臓が、痛い。
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