【完】女優橘遥の憂鬱
 あのバースデイプレゼンショーが、グラビアとAVの撮影だったことは社長も知っていると思い込み、あじあわされた苦痛の数々を赤裸々に告白していた。




 私はあのカメラマンを愛していた。
何時も傍で見守ってくれる彼を愛してしまっていたのだ。


でも……
もう愛してもらう資格もない。

監督に言われるままに遣られるだけの女など相手にもしてくれない。

そう思っていた。

幾ら監督命令だと言っても、素人相手に喘ぎ声を上げる女など愛せる訳がないのだ。


だから私は私に苦痛を与えた社長が許せなかったのだ。


「最初は拒否したのよ。あの三人で撮影は終わったはずだから……。彼よっぽど気持ち良かったのか、私を堪能していたの。その時私の中でイッたの。後にも先に彼だけだった……」

私は遂に告白していた。
そう……

後にも先に彼だけだったのだ。
私が受け入れた訳ではない。
それでも……
されだけが救いだったから。


「貴女、そのカメラマンを愛しているのね。でも良かったね。貴女の中で果てたのがその人だけで……。貴女はまだ誰にも汚されていない。私はそう思うよ」

社長のその思い遣りの込めた言葉が心に刺さった。
それでも私は社長が許せない。
許せる訳がないのだ。




 「案の定、次に交代したのは監督だったの。監督は『もっと力を入れろ。俺は気が短いんだ。みんなと同じ思いをさせないと後が怖いぞ』って言ったんだ。だから私は仕方なく、最大限の力を込めたの。その時に『あぁ、本当だ。マジに気持ちいい!! コイツはいい拾い物をしたな』って言われた」


「拾い物!?」
社長はびっくりしたように私を見た。


「見せられたのは、私の両親の借用書だったの。私が『拾い物!?』って驚いからかな? 『何でもない。ホラ下っ腹に力が入ってないぞ、真面目に遣れ』監督は上手く誤魔化しながらも、私に最大級の持て成しを催促したの」


私のその言葉に社長は一瞬声を詰まらせた。



「監督は『いいか、訴えるなんて考えるな。此方にはお前さんの両親の借用書がある。お前さんの身体でそれを払って貰おうとしているだけだからな』って凄味を利かせて言い放ったの。だから私は監督に従うしかなかったの」


「嘘でしょ。だって貴女には借金なんて無いわ」


「えっ!?」
声を詰まらせた私を社長は優しく抱き締めた。



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