【完】女優橘遥の憂鬱
 まずハイヒールのウォーキングを教える。

モデルの場合、一番多いのがこのハイヒールだからだ。


足の付け根から脚全体を真っ直ぐに出す。

つま先とかかとを同時に着地させる。


後ろ足の親指に力を入れて地面を蹴るように歩く。
この時、後ろ足や膝などを曲げないようにすることがコツなのだ。




 後ろにあるスペースで早速実施する。

彼は早速、緑色の人工芝を半分にカットした物を二つ用意した。

長さは事務所でも使用出来るようにしたので部屋の一辺のサイズだ。

それぞれに赤いマーカーがしてある。
短いのを縦に二つ並べばれば此処のような会場で長い距離の練習が出来る。

又事務所サイズなので、何時でも何処でも歩く練習が出来る訳だ。


赤いマーカーは彼が書いてくれた。
その上を真っ直ぐに歩く訓練のためだそうだ。

彼も彼なりに、工夫をしてくれたのだ。




 「では、用意してきたハイヒールを出してください」

私の発言で一斉にそれを出す生徒達。
私は未来のモデルの卵達を頼もしく見ていた。


「ハイヒールはビニールシートの上で履き替えてください。床が傷付いたら大変ですので」


「では、此方にお並びください」
彼も急遽指導員の一人に加わった。


「膝を曲げずに脚を一歩前に出す。この時、踵からの着地はダメです。先が細くなっていますから、バランスを崩して倒れてしまいます。又つま先から着地してもいけません。体の重心がズレてしまいます。ハイヒールでしっかり歩くには、土踏まずを意識してください。土踏まずの真ん中辺りを床に押し付けるように着地するとスムーズな足の運びが出来るようになります」

私の説明は完璧だった。


皆次々とこなしていく。


「それでは、次にこの赤い線の上を歩いてみてください」

まず、足を揃える。
一歩ずつ正確にせんの上を歩くにはつま先と踵までを線に乗せることが大事だ。


内股や外又では、体のバランスが取れ難くなる。
真っ直ぐに立つことも重要なのだ。




 次はモデルダイエット。


「カロリーが高いと言うだけが太る原因ではありません。一つの要因ですが……」


取り敢えず太るとされている食材リストを配った。


「これ全部がいけない訳ではありません。例えば、チョコレートですが、ちょこっと食べて歩けば体脂肪が消費すると言われています」



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