ねぇ、どうしたいの?
「しっかし、あんな奴の何がいいんだろうな?宮塚って冷たいって有名だろ?女はみんなMなのか?」
「女はクールな男に惹かれるもんなのよ。」
「だめだ、全然理解できん。美桜もそういう奴がいいのか?」
直樹くんに言われて、私は首を捻る。
「うーん、どうでしょう?でも宮塚くんって冷たくないです。優しい方ですよ。」
「そうなのか?そうは思えねーけど。」
「本当ですよ。昨日のこともそうですけど、それだけじゃなくて……」
言い掛けて、私の視線は前方に釘付けになった。
前から歩いてくるのは噂の彼、宮塚くん。
「一乃木さん、」
「え、は、はい!」
てっきりスルーされると思ってたのに、宮塚くんは私の前に立ち、私の名前を呼んだ。
な、何だろ……。
怒られるのかな……。
君のせいで噂になってるんだけど、とか…。
私が体を固まらせていると、直樹くんが横から割って入ってきた。
「昨日はうちの美桜がお世話になったようで」
「ちょっ、直樹くん!」
まるで喧嘩腰の直樹くん。
「一乃木さん、」
宮塚くんは見事に無視した。
「次の委員会、来週の水曜だから。忘れないようにって先生から。」
「あ、はい。分かりました。」
それだけ言うと宮塚くんは、あっさり私たちの横を通りすぎた。
「んだよ、あいつ。」
直樹くんは煮え切らない様子で、宮塚くんの背中を睨んでいた。
そしたら宮塚くんは急に立ち止まり、
「あ、直樹くん?だっけ?」
こちらに振り向いた。