猫と乙女
「恵里佳」



渋い声に、ハッとした。


およねさんは、小さな声で「またね」と言って席を立った。その時に見せた笑顔は『良かったね』と言ってくれているようにも思えた。



空いた席に『気まぐれ彼氏』秋田裕信が座った。


「ヒロ、遅いよ」



からっぽになったお皿を指差して言うと、ふぅーと、めんどくさそうにため息をついた。



「せっかく来てやったのに」



「返事がないから来ないと思って…」



細く、長い指にいかついシルバーリング。切れ長の目に薄い唇。



ちょっとキケンな香りのするヒロに、私は惹かれている。



でも、彼は…。



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