大好きな君の。
憐哉視点
「優哉、いま朋美が……」
病室の扉をあけると、まずめにとびこんできたのはあの女と優哉。
朋美もこの光景を見たのか……?
「憐哉、きたんだ」
そう言って笑った優哉。
昨日までとは何かが違う。
ああ、そうだ。あの頃の優哉に戻ったんだ。
本当に笑わなくなった事故当初の。
それに、すっかり憐くんで呼ばれ慣れてしまった俺には違和感。
「優哉、記憶もどったのか?」
「うん、そうみたい。遥、少し外で待っていてくれるか?」
天海は俺にだけ聞こえるように舌打ちをして、はやくしてよね、とだけいって病室からでていった。
俺は天海が出ていったことを確認して声をかける。
「もう、何も覚えていないのか?」
「なんのこと?」
「朋美のことだよ!!」
平然と、何事もないように冷たい顔で俺を見つめる優哉。
記憶をなくす前の優哉だってこんな顔したことなかった。
なのに、どうして。
「本当に全部忘れたのかよ……」
もういいの、そういった朋美の顔が頭によぎる。
ついこの間までとても幸せそうにしてたのに。
なんでこいつはこんなにも、あっさりと……。
そう思うと感情的にならずにはいられない。
そんな俺を嘲笑うかのように優哉は口を開いた。
「俺さ、遥と再会して思ったんだよね」
頬を少し緩めた優哉の姿はどこかつらそうで、悔しそうで。
「俺にはやっぱり遥が必要なんだって。あんなガキじゃなく、遥が」