◇東雲庵◇2014〜2017◇
【キリンジに恋をした顛末】
それで。
まだここまでハマってなかった時からさ、
キリンジの一番素敵なところはさ。
高樹兄さんのヘンテコな曲を、泰行さんがその類稀なる声で美しく歌い上げるというところだ、と。
思っていたんです、わたしは。
だから、2012年に泰行さんが「脱退」を発表した時に、とんでもない衝撃が走ったわけです。
だって、兄弟ふたりしかメンバーいないのに!
メインボーカルの泰行さんが脱退って!
それってもう、脱退も何も、解散に等しいじゃないですか。
バンドの解散劇なんぞもう慣れっこだけど、メインボーカル抜けるってなかなか無いですよ。死亡して止む無く、ってのはあれども。やっさんの歌声はキリンジの個性を決定付ける片翼なのに。
ふたりとも、バカじゃないの!?
どーしてそれが替えの効かないキリンジの肝であるってことが分からないのー!!!やっさんが抜けたら、やっさん以外がボーカルを担うなら、それはもう「キリンジ」じゃないじゃんかー!!
って、
当時のわたしは
泣きたいような半分怒りのような、複雑な心境になったものです。
大袈裟じゃなく、Jポップ界の宝を失うことだと思ってました。
(今でも半分くらいはそう思ってますが。)
ラストライブ、発売日の朝10時にローソンチケットに駆け込んだんですけど、チケットはどの公演も即日完売でした。解散コンサートってゆーと業者さんが買い占めちゃったりもするしね。
知り合いにも裏で聞いてもらったけど、もうどうにもならなかったんですね。音楽関係者にファンも多いので、関係者枠というのを今回は設けていないとかで。その時はほんとうにハンカチ噛んでました。
その後ラストライブはDVDになって発売されたけど、行けなかった悔しさもあるし、これを見てしまったら兄弟ふたりのキリンジを永遠に失ってしまった現実を突きつけられるような気がして(いや事実そうなんだけども)、ずっと入手していなかったんです。つまり、お別れが、できなかったんですねー。そのくらいには、好きだったんです、その時点で(笑)
、、どんだけ好きなんだって話なんですが。
泰行さんの脱退後、キリンジは「KIRINJI」と表記を改めて、女性ボーカルや様々な楽器のプロミュージシャン数名を新たに加え、高樹兄さんが基本ボーカルをとる形で再出発。
泰行さんはソロ活動をスタート。
袂を分かち、それぞれミュージシャンとして歩みはじめた。
泰行さん脱退の嵐が去って、ともすればキリンジのコトを忘れかけていた去年2014年の秋。
ここで、わたしはキリンジに関して二度目の衝撃を受けてしまう。
偶然にも泰行さんがソロライブを名古屋でやることを知って、チケットもするっと取れたんです。ま、ソロだしね。
そろそろ喪失のショックから立ち直りかけていたので、泰行さんのソロかー、曲はあんまり響かないけどでも、生で聴いたことないからあの美しい歌声を聴きに行こうかなーと、、、失礼千万。でも正直、そんな心持ちでした。
ちゃんとお別れ出来なかったから、私の大好きな高樹兄さんはいないけど、やっさんの歌声好きだし、ここらで踏ん切りをつけに行こう、と。その程度の気持ちで。
行ったらば、さ。
返り討ちに、遭ったわけです。
泰行さんのソロライブ。
生の歌声。
見事にやられました。
葵、ライブハウスにて、棒立ち。
葵、フロア中央にて、ダダ泣き。
キリンジを抜けた後なので、キリンジ名義の曲でも泰行さん作のもの(わたしがあまり胸に響かないと言い捨てていたもの)しかやらなかったのに。
泰行さんの歌を生で聴いたら、曲や詞が、ちゃんと胸に入って、着地したんです。
やっさんの歌は、それを作った本人であるやっさんが生で歌うと、全然違うものになる。
不思議な体験でした。
生で聴いたら、耳から入って、身体を巡って、胸に届いて、結果として脳で理解できた、みたいな。音楽を体得する、みたいな。
ほんとうに、不思議な体験。
音楽好きだけど、こんな衝撃は生まれて初めてでした。
そうしたら、何が起きたかというと。
キリンジの音楽の約半分を占める、泰行楽曲達を愛せるようになってしまって。
キリンジの中で「あんまり、、、」っていう要素が皆無になってしまった。
さー大変。
ここからわたしのキリンジ熱が加速。
ラストライブ、DVD、入手しました。
正月ひとりでヘッドホン大音響にして号泣。
ラストライブだから、歴史を振り返るベスト版みたいな感じで、そこで初めて出会った曲たちもたくさんあって。それがまた良い。若かりし頃の荒削りな楽曲たちの中にも彼ららしさを発見してそれがまた嬉しくて。ルーツ辿りたくなってきちゃって。
過去に彼らが出したアルバムをすべて入手。他のアーティストに楽曲提供したものも。エッセイ集、雑誌インタビューに至るまで、ふけるように読み漁ってましたねー。たいへんたいへん。もう、キリンジ(及び彼らのソロ)以外のものを、耳が受け付けなかったもの(笑)。
そのくらい、覗けば覗くほど、彼らの世界は深かった。浸り甲斐があった。興味深かった。気持ち良かった。すごかった。
36にもなって、こんなに何かに影響されることって、まだあるんだーと新鮮な驚きもあります。まだまだ若いな、わたし←
なんの話でしょう、すみません。
キリンジの詞世界がいかに文学か、についてはもう語り尽くせないので
歌詞検索で
『台風一過』とか『地を這う者に翼はいらぬ』とか『愛のcoda』とか『Love is on line』とか諸々ご覧になってみてください。特に、高樹さん作品を。
恋の顛末記です。
お粗末さまでした。
なんか猛烈に恥ずかしくなってきました。
ふ、すみません
こんなもの読ませて、、、
ちなみに
今になってわかったこともたくさん。
才能も頭脳もあって
自分たちの音楽にものすごい拘りを持っている高樹さんだから、泰行さんの脱退がキリンジにとってどういうものなのか、ということくらい、冷静に理解しているんだな、と。
その上で、
それでも良くて、
二人じゃ出来ないことをこれから新しく試してみたいのが、高樹兄さん=新生キリンジ、なのだな、と。
バカバカ!
と
やっさん脱退時に
あまり彼らのことを知らないのに
自分の好きなように彼らを見て
彼らを勝手に評価して
非難していた自分を
バカはお前だー!
叱ってやりたくもあります。
さて
6月には東京で新生キリンジのビルボードライブがあるのです。
どーにかして行きたいと思っている次第です。
今度は
生で高樹兄さんの歌声を聴いてきます。
どんな化学変化がこの身に起きるでしょう。
楽しみであります。