◇東雲庵◇2014〜2017◇
この世界の片隅に
早いもので新年が明けてもう10日も経つんですね。この調子でまた12ヶ月、あっという間なのでしょう。みなさま、本年もどうぞよろしくお願い致します。

昨年末、ついに『この世界の片隅に』には触れずに終わってしまったので、きょうはこれについて少しだけ。っていうのも、年末あたりからもう一大ブームになっていて、上映館も増えて、各メディアにも取り上げられ、ネットでポンとタイトルを検索すれば高名な方から名もなき人々まで、膨大な数の「熱い推薦文」がガーーーッと出てくるからで。今更わたしが何か書いたところであれらの熱量には勝てん、と思うからです(笑)

…あら、あらあらあら。
キネマ旬報ベストテンの日本映画部門第1位も獲ったんだ。わお!それはめでたいわ。ありがとう、ニュース7!

そういうわけで。老若男女、映画ファンからアニメ映画を初めて観るという人まで、思わず「ふむぅ…」「はふぅ…」と感心、感動のため息を漏らしてしまうのが、『この世界の片隅に』です。ご覧になった方、いらっしゃるかしら。

舞台は広島県呉市。太平洋戦争前後の、普通の人たちの、普通の生活を描きます。普通…うーん、主人公は普通と言うよりは、絵を描くことが好きで、他のことがちょっと疎かになっちゃう、今で言うと天然な少女。この少女・すずが広島から呉に嫁に行き、やがて戦争が始まる。 …公式サイトに情報は沢山あるので詳しくはそちらでね。

すずが描いた柔らかな水彩タッチの絵日記をそのままアニメ化したような演出に、ほう、と和みます。パッと入ってくる瞬間、色が、線が、目に優しいのです。それは同時に温かさも醸し出していて。それでいて、背景に関しては徹底的に当時の資料(その日の天気まで)や聞き込みを参考に、細かいところまで再現を試みています。だから、どなたかが感想文で書いていらしたけど「間違いなく現在と地続きの、過去の風景」であることが実感として伝わってくるし、フィクションだけどノンフィクション感が半端ないのです。

細かいところでまで事実を反映させたいという片渕監督の拘りは戦争が始まってからの描写にも現れています。例えば、呉の空襲時の空。地上から敵機を攻撃する高角砲の砲弾には、赤や青の色素が入っていて、炸裂すると色のついた煙が上がったらしいのです。これは、自分の放った弾がどの辺りで炸裂したか分かりやすくするためだそう。(攻撃の範囲がわかる)

わたしは空襲といえば火の赤と黒煙のイメージしかなかったので、空が色とりどりの綿飴のような煙で満ちていく様子は思わず綺麗、と感じてしまいました。戦争の空の色がこんなに幻想的なんて。哀しいと評せばいいのか、新鮮と言えばいいのか、やりきれない思いでいっぱいになります。

そうだ、やりきれないと言えば。

劇中で流れるコトリンゴちゃん(現、KIRINJIメンバーでもあります。←何故かちょっとわたしまで誇らしい笑)のそっと寄り添うような『悲しくてやりきれない』も魅力的です。

すずを演じるのんさんの、素直な声の演技もぴったり。これはのんさんにしか演じられなかった気がする。すずのキャラクターとのん、個人的にコトリンゴちゃんも加えて、奇跡の融合としか言いようの無い化学反応を起こしています。

この映画を、映画館で、逃すことなく観られて、わたしはラッキーでした。間違いなくこの作品はわたしの人生をすこし豊かにしてくれた。そんな、視点を与えてくれた。知らなかったことを教えてくれた。わたしに繋がる人々に、想いを馳せる時間をもらった。もう直接は祖母に戦争の話を聞けないことの後悔を感じさせられた。そんな、映画でした。

まとまりきらないまま失礼します。

詳しくは、公式サイトへ。
そしてそのあと、映画館へぜひ!(笑)

それでは、また。
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