茉莉花の少女
 そのとき引っかかったのが実のという言葉だった。

 僕のように親を拒否していてもなかなか使う言葉じゃない。

「わたしは養女なの。五歳くらいのときに笹岡家に来たから」

 彼女は深刻な話をあっさりと言ってしまった。

「兄と血が繋がっていないのか?」

「ま、そういうことかな。でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょう?」

「そうだけど」

 彼女の軽い口調を聞いていたら、それ以上そのことに触れるのに抵抗があった。
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