茉莉花の少女
 軽い口調で聞けばいいのか、深刻な話としてとらえればいいのかも分からない。

「大変だったりとかしなかったのか?」

 それだけを聞くのが精一杯だった。

「全然。だってお兄ちゃんもお父さんも優しいから」

 彼女は笑顔で返す。

 幸せしか知らない幸せな人間だと思っていたが、それだけでもないのだろう。

 彼女の兄や父がどんなにいい人間だったとしても、彼女が養子になったのには何か経緯があるわけだから。

 彼女の人生を勝手に幸せしか知らないと決めたことに軽い罪悪感を覚えていた。

「もしかして聞きたくなかった?」
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