茉莉花の少女
「そういうときは嘘でもいいから先輩みたいな綺麗でかわいい花なんでしょうねとでも言えばいいのよ」

 彼女はそう言うと、顔を背けてしまった。

「他の人から綺麗とかかわいいとか言われているでしょう? 別に僕が言わなくても」

「でも、あなたに言ってほしいって思うから」

 彼女は目を細めると、そう優しく告げた。

 心にダイレクトに届きそうなほど、アクも棘も飾りもない言葉だった。

 その彼女の仕草に胸の奥が熱を持つのが分かった。

 僕が次に告げるべき言葉を失い、彼女をただ見つめていたときだった。
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