茉莉花の少女
 ロビーに行くと、彼女が手を振っている。

 僕は彼女に駆け寄ると、その手を引っ込めさせた。

 彼女は残念そうな顔をしていた。

 そのまま腕を引っ張り、建物の外を出た。

 外には強い太陽の日差しが照りつけていた。


「暑いね」

 彼女は僕がつかんでいないほうの手で、太陽の光をさえぎっていた。

 僕は彼女の手を離した。

「あんなところで手を振るなよ」

「あれくらい普通だって」

 そう笑顔で返されると何もいえなくなる。

「先輩の部屋って隣なのに、何でロビー?」

「少し外を眺めていたの」

 彼女はそういって目を細める。
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