茉莉花の少女
 どう考えても取れるわけがない。

「花屋には売っていなかった?」

 彼女はうなずく。

「ネットで探したりしてみた?」

「あ」

 彼女は忘れていたのだろう。変な声を出す。

「じゃ、ネットで頼もうよ。人の家だし」

 そういって家を見た僕の視界に入ったのは奈良という表札だった。

 奈良って。まさか。そんなに多い名前ではない気がする。

「でも、今から間に合うかな」

 彼女は不安そうな声を出す。

「ちょっと待って」

 僕は携帯を取り出すと、電話をかける。

 すぐに電話がつながった。

「どうかした? 珍しいなお前が電話をしてくるって」
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