茉莉花の少女
 何か言われるだろうかと思ったが、僕がうなずくと、「そうか」とだけ言っていた。

「茉莉はおっちょこちょいなところがあるから、頼むよ」

 その言葉を聞いて、優人さんの言ったように気づいているのだと分かった。

 僕たちは彼に頭を下げると、家を出ることにした。



 彼女の家を出て、三分ほど歩いた場所で呼び止めた。

 彼女はクセのある髪の毛を揺らして振り返る。

 さっき父親と僕が会ってしまったことを全く気に留めていないような瞳だった。

「お父さんに知られても平気だった?」

 あまりに彼女が平然としているので、思わず気になって聞いてみた。

「大丈夫だよ」

 彼女はそれだけを言うと、少しだけ寂しそうに笑っていた。
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