茉莉花の少女
 昨日、彼女にキスをしたことも母親と同じだったからなのだろうか。

 そのときだった。

 茉莉よりも低い声が聞こえた。

「あなたが久司の彼女?」

 わざわざ出てきていたのか。その言葉に身震いする。

「そうですけど」

 茉莉の目が鋭くなる。

 一瞬、震えた唇を見て、彼女はそれが誰か気づいたのだと分かる。

 彼女は笑顔を浮かべる。

「そうです。昨日はわたしの兄のほうが彼を引き止めてしまって申し訳ありませんでした。

後日、お詫びをさせていただこうと思います」
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