茉莉花の少女
 先ほどの怯えた表情の微塵も感じさせないほど、そうすらすらと伝えていた。

 彼女は茉莉を脅すためにやってきたのかもしれない。

 あまりに平然に受け答える彼女に戸惑ったのは母のほうだったようだ。

 まじめそうな彼女が臆すると思っていたのかもしれない。

「そんなこと気にしなくていいわよ」

 そう言うと、家の中に引っ込んでいく。

 彼女に見られたくなかった。

 母親の存在を知られたくなかった。

 僕は彼女の顔を見ることなしに歩き出した。
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