茉莉花の少女
「お兄ちゃんの友達」

「その人は僕のこと」

 そこまで言って言葉を飲み込む。

 わざわざこんなことを聞く自分が惨めな気がしたからだ。

 教える必要もない。

 そして、彼女がそんなことを言うわけないと思っていた。

 そんな自分が不利になるようなことを相手に言う人間などいないのだ。

「知っているよ。もちろん、ね」

 僕は彼女を見た。

 彼女はこのまま消えてしまいそうなほど寂しそうな笑顔を浮かべていた。
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