茉莉花の少女
「きちんと伝えた。だから、一年だけ猶予をもらったの。結婚をする前に好きな人と一年だけつきあいたいって」

 信じられなかった。ただ、彼女の言葉を受け入れることしかできなかったのだ。

 僕は何も言えずに彼女をただ見つめていた。

「その人のことは?」

「いい人だよ。でも、久司君を好きな気持ちとは違う」

「好きじゃないのに、どうして結婚をしようと思ったんだ?」

「好きじゃないわけじゃない。それにいろいろとあったの」

 口数の多い彼女がそこで言葉を噤んでしまった。
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