茉莉花の少女
 目の前に座っている青いアイラインを引いた女を見て、ため息を吐く。

 彼女は先ほどからこびるような笑みを浮かべていた。

 僕の隣に座っているのはその女の隣にいるおとなしい印象の女と必死に話をしている男。

 休みの日に強引に呼び出されていけば、見ず知らずに女が二人。

 それでどういう状況かは自ずと分かる。

 彼はこの女と話をするために僕を利用したんだろう。

 ……くだらない。

 明日からこいつと口を聞くのもばからしい気がしていた。

「久司君は彼女いないんでしょう?」

 彼女は反復運動のように先ほどから何度も目を見開く。

 もしかして色仕掛けでもしているのだろうか。

 そう考えると笑いがこみ上げてきた。

「どうしたの?」

 笑顔を浮かべたのが打ち解けた合図だと思ったのだろう。

 身を乗り出して僕の顔を覗き込んでくる。
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