茉莉花の少女
 僕は帰り道、何も考えずに歩いていた。

 空は次第に白っぽい寒空に変化していた。

 突然、頬に冷たいものが触れ、持っていた傘を開く。

 夏場の雨は体を涼しくしてくれるものなのに、この時期の雨は体の熱を奪い去ろうとする。

 僕はコートのポケットに手を突っ込んだ。

 茉莉がいたら僕の手を握ってきただろうな。

 そんなことを想い、少しだけ自分を笑った。

 冷たい風が僕の体を吹き付ける。

「寒いな」
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