茉莉花の少女
 そんな考えが頭をよぎる。

 僕は彼女と別れた交差点まで戻ってきていた。

 車のエンジン音や人のざわめきが残る街角。

 先ほどと世界が何も変わらないことを告げるかのように車が走り抜ける。

 そのとき、僕の携帯が鳴った。

 発信者は今、僕が思い描いていた人だ。

 思わずすぐに電話をとった。

「もしもし」

「元気?」

 さっきと同じ明るい声を聞き、どこかほっとしていた。

「元気だよ」
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