茉莉花の少女
 今の気持ちを悟られたくなくて、そう強い言葉で言った。

 彼女のことをこんなときに考えていておかしいんじゃないか。

 そう思ったとき、彼女の声が響いた。

「今から会いたい」

「会いたいってさっきまで会っていたじゃないですか」

「それでも会いたい」

 何かを深く考え込んだような声。

 そのとき、信号が赤から青に変わる。

 今は少なくなった音楽の流れる信号機。

 その音楽が人のざわめきを包むように流れている。
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