ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
「……」
「……」
迎えた翌日の、作業部屋移動日。
『5班作業室』と書かれた部屋の前で自分の荷物を入れた大きなダンボールを持つ私の前には、立ちはだかる一つの男性の姿。
黒いパーカーを着た、ストレートな栗色の髪の彼。怠そうな、やや虚ろな目をして不健康な白い肌をしており、私より頭一つ以上高い身長のその体は、大きな大きな壁に見える。
無言、かつ無表情でこちらを見下ろす視線に、ダラダラと全身からは冷や汗が噴き出した。
…お、お、お…
大きいー!怖い!すごい見下ろしてる!威圧感!!
表情が読めないから余計怖い!怒ってる!?怒ってるのかな!?
「……」
「…あ、あの…」
「おいこら青井ー、でかい奴が入り口塞ぐな」
「あ、すんません」
「原もビビってないでさっさと部屋入れよ」
「は、はい…」
見合ったままどうにも動かない私と青井くん。それに対し室内にいたらしい少し長い髪をした男性・矢口さんは、青井くんの背中を筒状に丸めた書類で軽く叩き彼をどかす。
その大きな姿の横をコソコソッと通って、私はようやく部屋へと入ることができた。