ツンデレな彼と甘キュン社内恋愛
ここならまだ苦しくない…。
一番隅ということもあり人と人に潰される心配もなく、ふぅっと息を吐き出した。
あれ、でも一体誰が?
そうふと気づいた疑問に顔を上げると、目の前には壁に手をつき電車の揺れに耐える大きな姿…青井くんがいた。
「青井くん…?」
「…降りるの、どこ」
「××駅…」
「…ふーん」
自分で聞いておきながら、相変わらず興味のなさそうなその顔。けれど人と人に挟まれていた私をここまで導いてくれて、潰されないよう、守るように立ってくれている。
…優しい。
驚きながらもその行動が嬉しくてつい見上げたままでいた私に、彼は空いていた左手で私の頭をぐいっと下を向かせた。
「下、向いてて」
「へ?どうして…」
「俺に見下ろされるの、怖いだろうし」
「えっ!」
ってやっぱり私の今朝の発言根に持ってたんだ…!
気まずく下を向いたままでいると、視界に入るのは紺色に星のマークが書かれたカジュアルなローカットスニーカー。すごくおしゃれなわけではないけれど、だらしないわけでもない。そんな適度に気の抜けた格好がとても青井くんらしいと思った。