愛を知らないあなたに
正確に言うと、生贄がリョクに水をかけられて、タマがそれを面白そうに見ているのだが。


とても楽しそうだ。生贄を除いて。





「あははははははー」


「うわっ!ちょ、りょっちゃんかけすぎ!あぁ、着物がびしょびしょ・・・」


「「ああはははははー」」


「タマもりょっちゃんも、楽しそうに笑うなんてヒドイ。」



恨めしそうにタマとリョクを見る生贄。

するとタマとリョクは顔を見合わせ、肩をすくめて、ちょこっと頭を下げた。



「やりすぎたかも・・・ごめんー」


「ごめんー」



リョクに続いて、タマが『ごめん』だけを繰り返す。


生贄はそれを聞いて、ふむと頷いた。



「分かったんならいいよ。

じゃ、とりあえず神社に戻ろっか。

あたし着物着替えたいし、ちょうどお昼時で、お腹すいたしさ。」


にっこりと微笑みを浮かべる生贄に、タマとリョクが大きく頷いた。




「よし!じゃーじんじゃへしゅっぱーつ!」


タマが右手を拳にし、空へと突き上げた。

そして、タマを先頭にして、リョク、生贄と続いていく。


生贄は、顔だけ俺のほうに向けて、俺に柔らかい微笑みを向けた。





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