愛を知らないあなたに
嫌な予感が頭の中を回る。



恋人、なのだろうか。

胸のうちで呟いた途端、キリキリと胸が痛み始める。



ありえない話では、ない。

琥珀様は、美形だし・・・・・・むしろ、いない方がおかしいのかもしれない。




「何って、きゅうりが無いんだよきゅうりがーっ!!!」


「胡瓜?それは今はまだ採れぬ野菜だぞ。」


「琥珀!そんなぁ・・・・・・」


「あはは!リョク、あんた毎年そうやって項垂れてるよね~」


「りょっちゃん学習のーりょくないからねー」


「えぇっ!タマ、酷いぃー」



わいわいと楽しそうな会話。


『毎年』

その単語が、鋭くあたしの心に突き刺さる。



この女の人は、毎年琥珀様達と一緒にいるんだ・・・・・・。


思わず、俯いた。

少し、居心地が悪い。



あたしは、まだ、ここに来てから一月(ヒトツキ)も経っていない。


そう思うと、なんだかすごく、気後れしてしまった。





・・・・・・やっぱり、琥珀様の恋人か何かなのだろうか・・・。




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