背徳の薔薇
僕はスーツを、千夏はワンピースを着て、ホテルを出た。
「じゃあね」
千夏はそう言うと、あっさりと僕の前から去って行った。
彼女は今から誰もいない家に帰宅して、旦那のために夕食を作るんだろう。
僕は、仕事の空き時間にスリルと快楽を楽しんで、さぞ仕事をこなしてきた顔で帰宅するんだ。
あれほど惹かれて結婚したのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
おそらく。
僕は彼女の位置づけを、女から生活のパートナーに変えてしまったんだ。
だからって、不倫をしてもいいはずはない。
僕は、身勝手だ。
美樹に対する罪悪感は、もちろんある。
だから、僕は美樹に優しくなれる。
今日は、美樹の好きなロールケーキを買って帰ろう。