虹色の流星
 コンコン
 南戸健と書かれた病室のドアを静かに開けた。
「こんにちは…前原美月です…」
 あたしが、入っていくと、健の親御さんっぽい方がいた。
「あなたが、美月ちゃんね。説明するより…」
 健のお母さんが、ベットに目を向けた。
 そこには、眠っている健。
 あたしには、そんな風にしか見れなかった。
 ホントは、違うのかもしれない。
 でも、そう信じていた。
 この時は…

「美月ちゃん、事実を受け入れるのは、難しいかもしれないけど…」
 そこまで言うと、健のお母さんは泣きながら、説明してくれた。
 デートをした後、一度家に帰った健は、あたしの家に来ようとしていた。
 どうしても、伝えたいことがあったようだ。
 急いで、走って行った。
 はやく、あたしに逢いたくて、走っていた。
 でも、信号を無視したトラックが、運悪く健を轢いてしまった。
 当たり所が悪く、あと数時間しか生きられないらしい…

 健のお母さんが言ったことが、信じかれなかった。
 泣くしかなかった。
 健が、あたしに伝えたかったことって何?
 なんで、走ってきちゃったの?
 なんで、トラックは健を轢いたの?
 
 たくさんのなんでに包まれたあたしは、健が寝ているベットを泣きながら、叩くしかなかった。
 信じたくない、あたしの前で笑っていた健が、一瞬でいなくなってしまった。
 この喪失感は、二度と埋まることはない。
 誰が、健の代わりになってくれるの?
 誰もいない…
 あたしも、健と同じところに行くしかない…
 ほんの数分で、頭の中にたくさんの考えが、浮かんでは消えて…
 
 あたしは、健が眠るベットで何時間も泣き続けた…


 
< 10 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop