繋いだ手を
正面玄関のロビーに面したガラスの向こうは、真っ暗な闇に閉ざされている。庭の照明は疎らで仄暗くて、ガラス越しに見える木々の陰がかなり怪しい雰囲気。
できるなら、見たくもない。
本来見えるはずないものが、見えてしまいそうだから。
とりあえず目指すのは大浴場、周りなんて見てはいけない。言い聞かせるのに、つい視線が動いてしまう。
ロビーに並んだソファへと。
怖いもの見たさというのだろうか……
ぞくりと体が震えた。
ソファの背もたれから、黒い影が覗いている。暗くてよく見えないけど、どう見ても肩と頭としか思えない。
背筋を冷たいものが駆け上がる感覚に、足がすくんで動けない。
早く目を逸らしてしまえばいいのに、視線は黒い影を捉えたまま。
ゆっくりと、影が振り向いた。
私に気付いて立ち上がる。
だけど、逆光ではっきりと顔は見えない。