繋いだ手を
「あ、雪乃さん? お疲れ様です」
この声は、新入社員の坂木君。
強張っていた体の力が抜けて、代わりに苛立ちがこみ上げてくる。
「お疲れ様、もう消灯時間だけど、ここで何してるの?」
強い口調で言い放った。
怖がってしまった自分ではなく、そこに坂木君がいたことに対する腹立たしさを込めて。
驚かすつもりはなかったのだろうけど、結果的に驚かされたことが許せない。だって彼が居なかったら、私はこんなにも驚かなくて済んだのだ。
「すみません、寝られないから、ぶらっとしてたんです」
坂木君は落ち着きのある低い声で、ぺこりと頭を下げた。まさか謝られるとは思わなかったから拍子抜け。
言葉を探しているうちに、坂木君の顔が影の中から露わになる。ふわっと髪をかき上げて、私を見下ろす表情はやわらかい。
あんなに怖かった気持ちは消えて、違う気持ちに取って代わっていた。