繋いだ手を
怖いなんて少しも感じることなく、あっという間に大浴場に着いた。
坂木君の手から力が抜けていく。
思わず、ぎゅっと握って引き止めてしまった。
「ここで待っててあげようか?」
優しい声が頭上から降ってくる。
そっと見上げると、坂木君はふわりとした笑顔。胸がぐらりと揺らいでしまうけど、私を見る目はまるで子供を見る親のように感じられて。
これじゃあ、どっちが先輩だかわからない。
「ありがとう、ここでいいよ」
ぷるっと手を振って解いた。
私は先輩、坂木君は新入社員。
先輩なのに情けないところを見せちゃいけないんだ。
「雪乃さん? だったら、ロビーで待ってるよ」
しつこく坂木君が縋ってくる。
坂木君の手が離れた私の右手が冷えていく。冷たい空気を掴むように、固く拳を握り締めた。
「いらないから、早く部屋に戻りなさい」
言ってしまってからすぐに後悔。
きつく言い過ぎたかも……
胸が苦しくなる。