繋いだ手を
「そうよ、正解。そこに停まってるフェリーに乗るから早く並んで」
坂木君は得意げとも思える笑顔で私を見てる。
だけど、ここはフェリー乗り場。
こんな所でバスを降ろされたら、これからどこへ行くかなんて誰でもわかることだろう。
当たったからといって、特に凄いことでも何でもない。
すると坂木君が、くすっと笑った。
「俺たち、ドナドナみたいですね」
「え? ドナドナ?」
「知らないですか? ドナドナっていう歌、子牛が市場に売られていく歌なんだけど?」
「いや、知ってるけど……」
「俺たちが子牛、これから売られるんですよね、フェリーに乗せられて」
と言った坂木君は、全く不安を感じさせない表情。穏やかさとともに自信に満ちている。
彼にとっては不安より、楽しみの方が大きいのかもしれない。
そんな彼の顔を見ていると、胸がぞわぞわして落ち着かない。できれば早く、この場を離れたいのだけど。