繋いだ手を
「面白いこと言うね、研修頑張って」
「ありがとうございます。雪乃さんも、あの島で研修したんですか?」
早々に追っ払おうと素っ気なく返したのに、逆に質問を返されてしまった。
「うん、新人研修は毎年恒例だからね」
さらっと答えてみせたけど、内心は違う。
もう質問しないで、早くどこかに行ってしまって……と念じていた。
切実に。
坂木君はふわりと笑みを見せて、丸い目をいっそう輝かせる。
まるで私の念は通じていない。
「やっぱり? よかったら後で、雪乃さんの研修の話とか教えてくださいね」
弾むような声が、胸を揺さぶる。
目を逸らそうとしたら、ゆるやかに吹き抜けていく風が髪をかき乱していった。潮の香りをたっぷりとはらんだ風。
坂木君が、乱れた前髪をかき上げた。しなやかな手の動き、指の間をすり抜けていく髪が陽射しを浴びて輝いている。