青春を取り戻せ!
彼女はまたボールに集中しはじめた。

僕は自分の度胸のなさに腹が立ち、それを小さなボールにぶつけた。

怒りを詰め込んだボールは、空気を引き裂く音をさせて低く飛び出したのち、二段ロケットのように上昇し、200ヤード先のネットにぶつかった。

「ワーッ凄い! ナイショット!」

後ろから声が聞こえた。

振り返った。

彼女と目が合った。

「ありがとう。 ご迷惑でなかったら教えてあげましょうか?」

と、僕は驚くほどスムーズに、しかも会心の笑顔で言っていた。

「わーっ嬉しい。是非お願いします」

彼女のととのった顔が魅力的に崩れ、エクボが現れた。

たっぷり汗を流した後、彼女の「疲れたわ」に我に返った。

(えっ、もうこんな時間か!)
後ろ髪を引かれる思いで帰り支度をはじめた。

…いいのか、このまま別れて?

…ガッツだせ!

……でも何て…?

彼女を誘う言葉を探した。馴れていないせいか、…浮かんでこない。

思案しながら、たどたどしくシューズの紐をゆるめていた。

その時、頭上から天使の声が・・・。

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