青春を取り戻せ!
彼女は再び瞳を膨張させた後、ほおをピンクに染め、見つめたままの瞳をかがやく透明な液で徐々にいっぱいにした。

「バカ!バカ!……」

すがり付く彼女を、バラの花束の上から抱き締めた。

胸を刺す物理的な痛みに我に返り、花束を放り出すと、再び彼女を抱き締めた。しかし心情的な部分での胸の痛みはせつなくつづき、刺すような痛みは相変わらずとれなかった。

しかし逆に、この痛みが希少で大切な宝石のきらめきにも感じられ、永久に終わらないでくれと願い、彼女の細い背中をありったけの力で引きよせた。

いつも真黒に日焼けしてオテンバだった少女が、見事な蝶に変体を遂げていた。鱗粉(りんぷん)と鱗毛に可憐な色をつけた、美しい蝶に変身していた。

7年の失われた歳月が、僕と優紀を思いがけず、ただの男と女に変えていた。白木夫婦の陰謀がなければ、たぶん不可能な仕業だったと思える。僕はあの日以来始めて彼らに感謝していた。

優紀も僕の変貌に驚いていた。

輝きみたいな物は消えたが、深みとシャープさが代わりに備わり、反ってシブい二枚目になったと言ってくれた。

何故か素直には喜べなかったが、僕らは外見よりももっともっと深い、人間としての内面から引かれ合っているという認識を持っていたので、そんなことはどうでもいいことだと考え直した。

      *

白木たちからは出所したことは極力隠したかった。

知られると、今後の復讐計画に支障をきたすからだ。
だから自分の家に住むのは避けた。
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