青春を取り戻せ!
そして勿論、優紀と同居するのもためらわれた。取りあえずはアパートが決まるまで、彼女の家に居荘郎させてもらっていたが。

お金は、刑務所での労働にわずかな日当が支給され、それと彼女が手付けず定期預金にしてくれていたのを合せると、約6百万あった。復讐が終了するまでは働かなくても済みそうだった。

僕はここから2駅離れた所にアパートを借り、必要最小限の家具と、中古のクラウンを買った。

そして、7年間のギャップを取り戻すための医薬学の勉強と、復讐のための準備に掛かった。 ――――

     *

「タツロー!こんな所で寝てたらカゼひくわよ」

突然、唇を何かに塞がれた。

「あれっ!?どうしたの?」

優紀だった。

「うん。どうしても会いたくなって、車飛ばして来ちゃった」

僕は愛らしい瞳に見つめられ、心が安らぐのを感じた。

「ちょっと感傷に浸ってたんだ。それより、もう一度キスして」

「いいわよ。何度でもしてあげる」

僕はキスを受けながら、済まないという気持ちが湧いてきていた。 僕らは本当の意味では恋人になっていなかったのだ。心も体も準備ができていたはずなのに、肝腎な時になると僕の機能は停止した。体中食べてしまいたいような愛情と、包み込むような優しい感情を常に抱いていたが、何故か最後の一線が越えられない燻るようなジレンマに心を痛めていた。 
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